「うちは大丈夫!」と思う前に。西東京の地形から考える、これからの防災
2026.08.18
ハザードマップで知る、川・坂・低地とわが家の災害リスク
― 国土交通省・国土地理院のハザードマップポータル(2026年7月機能更新)―
https://disaportal.gsi.go.jp/
地震、豪雨、洪水、土砂災害。大きな災害が起きるたびに、
「自分たちの住んでいる地域は大丈夫だろうか」と考える方は多いのではないでしょうか。
2026年も、熊本での大きな地震や千葉県での豪雨災害など、
自然災害の怖さを改めて感じる出来事が相次いでいます。
しかし、防災で本当に大切なのは、災害のニュースを見て心配することだけではありません。
「もし同じようなことが、自分の家の周辺で起きたらどうなるのか」
そこまで具体的に考えてみることです。
特に私たちが暮らし、仕事をしている西東京エリアは、
地域によって地形や河川との関係が大きく異なります。
多摩川沿いの低地もあれば、国分寺崖線などによる高低差のある地域もあります。
野川、仙川、石神井川などの身近な河川が流れる地域もあります。
さらに、川から離れていても、猛烈な雨によって下水道などの排水能力を超えれば、
道路や住宅地が浸水することがあります。
だからこそ、
「西東京だから大丈夫」ではなく「自分の家がある、この場所はどうなのか」
それを知ることが、わが家の防災のスタートになります。
西東京エリアは、実は地形の変化が大きい
「西東京」と一口に言っても、街の姿はさまざまです。
調布、府中、狛江、三鷹、小金井、武蔵野、西東京、国立など、
それぞれに川や地形の特徴があります。
たとえば、調布・府中・狛江・国立などでは、南側を流れる多摩川が大きな存在です。
また、調布・三鷹・小金井周辺では、野川や仙川などの河川があります。
さらに西東京市周辺では、石神井川などの流域についても水害への備えが必要です。
西東京市が2026年3月に改訂した浸水ハザードマップでも、
河川の氾濫による「外水氾濫」と、下水道の排水能力を超える大雨による「内水氾濫」の
両方が示されています。
つまり、注意すべきなのは「大きな川のそば」だけではありません。
多摩川は暮らしの魅力であり、水害リスクでもある
西東京地域を代表する河川の一つが多摩川です。
晴れた日の河川敷は、散歩やジョギング、スポーツ、サイクリングなど、
多くの人にとって身近な憩いの場所です。
しかし、大雨が続けば様子は一変します。
府中市が2026年4月に更新した水害ハザードマップでは、
多摩川が氾濫した場合の浸水区域だけでなく、
堤防の決壊によって木造住宅が倒壊・流失する可能性のある
「家屋倒壊等氾濫想定区域」も示されています。
また、調布市や狛江市でも、多摩川の氾濫を想定した洪水ハザードマップが公開されています。
2019年の令和元年東日本台風では、多摩川流域で水位が大きく上昇し、
調布市をはじめ周辺地域で浸水被害が発生しました。
多摩川は身近な川だからこそ、「普段の姿だけを見て判断しない」ことが重要です。
多摩川から離れていても、水害は起こります
では、多摩川から離れていれば安心でしょうか。
そうとは限りません。
西東京エリアには、野川・仙川・入間川・石神井川など、住宅地の中を流れる中小河川があります。
三鷹市の浸水ハザードマップでも、神田川流域や野川・仙川・入間川などについて、
河川氾濫と浸水リスクが示されています。
小金井市でも、野川・仙川・入間川などの流域浸水予想区域を防災マップに反映しています。
普段は穏やかで小さく見える川でも、
短時間に大量の雨が降れば、急激に水位が上昇することがあります。
特に近年の豪雨は、「長時間しとしと降る雨」だけではなく、
「短時間に一気に降る雨」への注意も必要です。
川があふれなくても起きる「内水氾濫」
西東京エリアで、もう一つぜひ知っておきたいのが内水氾濫です。
内水氾濫とは、河川そのものが氾濫しなくても、
大量の雨によって下水道などの排水能力を超え、雨水が街の中にあふれる現象です。
調布市では、洪水ハザードマップとは別に内水ハザードマップが公開されており、
府中市の水害ハザードマップにも内水氾濫マップが掲載されています。
また、西東京市の最新ハザードマップでも、外水氾濫と内水氾濫の両方が表示されています。
このように、「近くに川がないから、水害とは関係ない」とは言えないのです。
道路が周囲より低い場所や、坂の下、雨水が集まりやすい場所では、
短時間の豪雨によって冠水する可能性があります。
西東京ならではの「坂」と「高低差」にも注目
西東京地域を歩いていると、意外に坂が多いことに気づきます。
これは武蔵野台地と河川沿いの低地、そして国分寺崖線などの地形が関係しています。
調布、小金井、国分寺方面などでは、街の中に目に見える高低差があります。
この高低差は、自然豊かな景観をつくる一方で、防災を考えるうえでは重要なポイントです。
大雨の際には、水は当然、高い場所から低い場所へ流れます。
普段何気なく使っている坂道が大量の雨水の通り道になることもあります。
坂の下やくぼ地、周囲より低い道路などに水が集まる可能性もあります。
また、崖線や急な斜面の近くでは、地震や豪雨の際に土砂災害への注意も必要です。
ハザードマップを見るときには、
「浸水想定区域に入っているか」だけでなく、
「自宅周辺の地形がどうなっているか」まで見てみることをおすすめします。
同じ市内でも、数百メートルで条件は変わる
ここが、西東京エリアの防災を考えるうえで特に重要なところです。
たとえば、同じ市内でも次のような違いがあります。
- 川沿いの低地にある住宅と、台地上にある住宅
- 坂の下にある住宅と、坂の上にある住宅
- 大きな道路沿いの住宅と、細い道路の奥にある住宅
それぞれ災害時の状況は違います。
行政区域だけを見て、
「調布市だからこう」
「三鷹市だからこう」
「府中市だからこう」
などと判断することはできません。
市境よりも、地形や川との位置関係のほうが重要な場合もあります。
だからこそ、広域的に確認できる国の「ハザードマップポータルサイト」が役立ちます。
国の「ハザードマップポータルサイト」を使ってみよう
国土交通省・国土地理院が提供する「ハザードマップポータルサイト」では、
全国のさまざまな災害リスクを確認できます。
大きく分けて、
「重ねるハザードマップ」
「わがまちハザードマップ」
という二つの機能があります。
「重ねるハザードマップ」では、自宅や職場などの住所を入力して、
- 洪水
- 内水氾濫
- 土砂災害
- 高潮・津波
- 土地の成り立ち
- 避難場所
などの情報を地図上で重ねて確認できます。
特に西東京エリアでは、「河川+地形+避難場所」という3つを一緒に見てみると、
街の見え方が変わってきます。
「いつも使っているこの道は、実は低い場所だった」
「避難所へ行く途中に川を渡らなければならない」
「自宅は大丈夫でも、駅までの道に浸水リスクがある」
といったことに気づくかもしれません。
各市のハザードマップも必ず確認する
国のハザードマップと合わせて、自分が住んでいる市のハザードマップも確認しましょう。
西東京エリアでは、各自治体が地域事情に応じたマップを公開しています。
調布市:洪水・内水の両方を確認でき、マイ・タイムライン作成欄も設置
府中市:多摩川の氾濫、家屋倒壊等氾濫想定区域、内水氾濫、避難行動判定フローなどを掲載
三鷹市:野川・仙川などを含む最新の洪水浸水想定区域図を反映したマップを公開
小金井市:2025年に防災マップを全面改訂し、2026年7月にも情報を更新
西東京市:2026年3月版の浸水ハザードマップを公開
ハザードマップは、一度見たら終わりではありません。
河川整備や避難所、想定区域などは更新されることがあります。
数年前に見た人ほど、もう一度確認してみる価値があります。
家だけでなく「いつもの生活動線」を見る
ハザードマップで自宅を確認したら、もう少し範囲を広げてみましょう。
たとえば、普段の生活でよく使う場所や道です。
- 自宅から駅まで
- 子どもの学校や保育園まで
- 職場まで
- 高齢の家族が暮らしている家まで
- よく利用するスーパーまで
災害は、自宅にいるときに起こるとは限りません。
さらに、避難するときにも「最寄りの避難所はどこか」だけでなく、
「そこまで安全に行けるか」を見る必要があります。
避難経路の途中に河川や橋、アンダーパス、急な坂、崖など、冠水しやすい場所がないか。
できれば天気の良い日に、一度歩いてみるとよいでしょう。
地図だけでは分からない街の高低差が見えてきます。
「避難=避難所へ行く」とは限らない
防災というと、「危なくなったら避難所へ」と考えがちです。
しかし実際には、自宅の場所や建物の構造、想定される浸水深などによって、
取るべき行動は変わります。
- 安全な場所にある親戚や知人宅へ早めに移動する
- 安全が確保できる場合には、自宅の上階で過ごす
- 危険が迫る前に地域外へ移動する
さまざまな選択肢があります。
大切なのは、災害が起きてから考え始めるのではなく、
「自分の家の場合はどうするか」を事前に決めておくことです。
家づくり・リフォームにも「地域防災」という視点を
私たちが家づくりやリフォームを考えるとき、
間取り、デザイン、断熱性、耐震性、収納、設備など、さまざまなことを検討します。
そこにぜひ加えてほしいのが、
「この家が建っている土地には、どんな特徴があるのか」という視点です。
たとえば、浸水リスクが考えられる場所なら、
- 分電盤や電気設備の高さ
- 給湯器や室外機など設備の設置場所
- 1階に置く家具や家財
- 止水板などの浸水対策
- 非常用品を保管する場所
- 停電・断水時の生活方法
など、住まい側で考えられることがあります。
地震についても、耐震性能だけでなく、家具の転倒、ガラスの飛散、避難経路の確保など、
「建物が倒れなければそれで終わり」ではありません。
防災は、非常用品を買うことだけではなく、住まいそのものを考えることでもあります。
西東京に暮らす私たちだからこそ、一度地図を開いてみる
私たちの暮らす西東京エリアには、
多摩川、野川、仙川、石神井川などの身近な河川があります。
台地があり、崖線があり、坂や低地があります。
そして、それぞれの街に、それぞれ違った災害リスクがあります。
だから、「東京だから大丈夫」でも、「多摩川から離れているから大丈夫」でもありません。
大切なのは、自分の暮らしている場所を知ることです。
まず今日、ハザードマップポータルサイトを開いて、自宅の住所を入力してみてください。
次に、
- 職場
- 学校
- 離れて暮らす家族の家
なども見てみましょう。
そして家族で、「もし今、大雨になったらどうする?」「もし大きな地震が起きたら、どこで会う?」
と一度だけでも話してみてください。
熊本の地震や千葉の豪雨など、各地で起きている災害は、
決して「遠い場所だけの出来事」ではありません。
私たちの暮らす西東京にも、地域特有のリスクがあります。
災害そのものを防ぐことはできません。
けれど、
- 自分の土地を知る
- 危険な場所を知る
- 逃げる場所を知る
- 住まいを備える
これは、今日からできます。
「この地域は大丈夫だろう」ではなく、「わが家のこの場所は、どうだろう?」。
そこから、地域に根ざした防災を始めてみませんか。
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2026.06.24


